見たまま 感じたまま

汐見稔幸&和恵が思ったことを つらつらと、おしゃべりするように綴ります。

2024年8月22日

子どもの人権を尊重するトイレ~韓国保育視察研究より~

2024年7月、韓国保育視察研修に10人の園の先生たちと行きました。                その時、先生たちの目にとまったのが男子トイレでした。男子便器1台ごとに衝立があり、プライバシーが守られていたのです。日本では腰掛ける便器は個室になっている園が多く、鍵がかかるようになっているのが一般的になりました。                                           しかし男子便器に衝立がついている園のトイレはこれまで見たことがありませんでした。                                 研修から帰国して数日後、東京都練馬区の豊玉保育園の園長、浅村都子先生から以下の写真が送られてきました。                                                       早々に男子トイレを改良したのです。なんというスピード感、良いことはすぐ実行という浅村都子先生の姿勢がこのトイレに表れています。

「プライバシーを配慮する」ことは、「人権を尊重すること」でもあるということは知っていても、男子トイレのプライバシーが守られていなかったことに気づかされたのです。

知っている、分かっていると思うことで、それ以外の視点で物を見ることができずに、かえって見えていないこともあるのです。                                           園の中で「せんせい」と呼ばれて、「今ちょっと忙しいから待っててね」と言いながら忘れてしまっている先生。子どもは待っていますよ。                                               そのことが人権侵害につながると思わずに、日常的にそんな言葉を子どもに言っていませんか?日頃、先生が子どものことばを大切に思って話を聞いていれば、「待っていてね」という自分の言葉にも責任を持ちます。用事が済んだ後で、「お待たせしました。さっきのお話は何だったの?」と子どもに伝えれば、子どもは自分の思いや言葉が大事にされていることを日々の中で実感します。                                       そのようにして育った子どもは、自分の思いや言葉を相手に伝えられるだけでなく、他者の思いや言葉なども大事にすることができるのではないかと思います。                     汐見和恵

東京都練馬区の豊玉保育園 男子便器改良前と改良後

改良前

韓国視察後、すぐに改良

改良後、プライバシーに配慮された男子便器

  

2021年3月6日

保育室に何をどう置くか?〜スウェーデンのプレスクールから考え方のヒントをもらう

2017年月末、新渡戸文化短期大学を退職後、家保研に軸足を移して活動する予定でしたが、フレーベル館から「子どもが育つ園を本気で作りたいので、園長を引き受けてもらえないか」と思いもかけないお申し出をいただきました。

園長を引き受けるなんてとんでもないと、最初はすぐにお断りするつもりでしたが、頭には「こんなふうにしたらどうだろうか」と次々とイメージが湧いてきます。断るつもりなのに。あれっ、変だなぁと自分でも自分の気持ちを量り切れずに半月ほどが過ぎました。「保育者養成校で教えていたことを実践で生かしてみなさい」と天から声が聞こえてくるような気持になりました。結局、大学の教員は口ばっかりだから、今度は実践しろということねと自分を納得させてフレーベル西が丘みらい園の園長をお引き受けすることしました。

ちょうど開園準備の年に出かけたのが、スウェーデンのストックホルムのプレスクールでした。

今回訪問したのは、レッジョエミリアアプローチを取り入れているプレスクール。イタリアのレッジョエミリア専門資格であるペタゴジスタ(教育学の専門知識を持って教育実践を指導する役割を持つ)とアトリエリスタ(美術専門教師)の両資格を持つ、Jane Wensbyさんに3つのプレスクールを案内していただきました。いずれも子どもの主体性を大事にした教育を行っている就学前学校です。今回はその3校の、主に環境構成に視点を当てて紹介します。良い環境があればよい教育ができるわけではありませんが、日本の園においてもヒントになるものがたくさんありました。

すべてに意味があり、意図がある

1.Förskolan Örnen (イーグル就学前学校)

2.Förskolan Aspen (アスペン就学前学校)

3.Snickerbarnens Förskolan (スニッケル就学前学校)

子どもが集めてきたどんぐり、まつぼっくりなどの自然物をみんなでみてみようという時。こんなふうに置けば美しく、系統的で、見ただけで子どもは自分なりに1つの概念の枠組みを持つことができるのです。

日本では大人が考えて“子どもにとって好ましいもの”を保育室に置いています。でも美しいもの、素敵なものは誰がみても素敵です。ネックレスやシルバーのチェーン、一緒に貝殻など・・・ここに光が当たると色が反射してとても美しい。それを感じるだけで充分なのです。

絵本をいつでも子どもが手に取れる場所に置くことはとても大事。日本でも最近はオープン式の本の表紙を前面にした本棚を置いている園も多くなりました。このように机の上に並べておく方法もありますね。日本の保育園でも見たことがあります。スペースがあればこんな置き方も子どもが手にとりやすいです。あるテーマを持って、その種の本だけ置くのもよいですね。

保育室に何をどのように置くか。そのものの存在が子どもの心にどう響くのでしょうか。それは分かりません。素敵!とか美しいとか、不思議、どうなっている?へんてこなの、触ってみたい、自分でも作ってみたい、試してみたい・・・

心がさまざまに揺れることこそが、子どもの感性に訴えるということなのだとこれらのものたちが訴えていました。ここにもこれは大人のものという発想の枠はありません。

<参考文献>
『スウェーデン保育の今 テーマ活動とドキュメンテーション』
白石淑江・水野恵子著
かもがわ出版 2013年

『スウェーデンに学ぶドキュメンテーションの活用』
白石淑江著
新評論 2018年   

2020年11月16日

これから保育は超面白い!

世界は今、「保育・幼児教育」に注目している!

そもそも保育という仕事を世界の視点で見ると、とても重要な仕事になってきている、と考えていいんですね。ヨーロッパでは、政治家さんが幼児教育の重要性を訴えていますし、中国やシンガポールなどのアジアでも同様です。『世界中で着目されている仕事=保育・幼児教育』、ってことを若い人たちには知って欲しいですよね。では、なぜ、保育幼児教育の仕事が注目されているのか!? この答えは世界中の先端の研究成果からも導けます。2013年に発表されたオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン博士の論文では、2030 年くらいまでに調査対象の702の仕事のうち、約47%がなくなっちゃう、というびっくりする仮説が提示されました。半分の仕事がなくなっちゃうという。その調査の中でも『保育・幼児教育などの仕事』はなくならないという結果がありました。これは勇気付けられますよね(笑)。あるいはノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・J・ヘックマン博士の研究結果では保育・幼児教育期にどのような支援を受けたかによって、大人になった時の経済的な環境が大きく変わってくるというものもあります。
つまり保育・幼児教育の環境設定が、その子の幸せだけでなく、国の幸せや経済にもつながってくる。それなら力を入れようと思いますよね、保育にも幼児教育にも。

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