2017年月末、新渡戸文化短期大学を退職後、家保研に軸足を移して活動する予定でしたが、フレーベル館から「子どもが育つ園を本気で作りたいので、園長を引き受けてもらえないか」と思いもかけないお申し出をいただきました。
園長を引き受けるなんてとんでもないと、最初はすぐにお断りするつもりでしたが、頭には「こんなふうにしたらどうだろうか」と次々とイメージが湧いてきます。断るつもりなのに。あれっ、変だなぁと自分でも自分の気持ちを量り切れずに半月ほどが過ぎました。「保育者養成校で教えていたことを実践で生かしてみなさい」と天から声が聞こえてくるような気持になりました。結局、大学の教員は口ばっかりだから、今度は実践しろということねと自分を納得させてフレーベル西が丘みらい園の園長をお引き受けすることしました。
ちょうど開園準備の年に出かけたのが、スウェーデンのストックホルムのプレスクールでした。
今回訪問したのは、レッジョエミリアアプローチを取り入れているプレスクール。イタリアのレッジョエミリア専門資格であるペタゴジスタ(教育学の専門知識を持って教育実践を指導する役割を持つ)とアトリエリスタ(美術専門教師)の両資格を持つ、Jane Wensbyさんに3つのプレスクールを案内していただきました。いずれも子どもの主体性を大事にした教育を行っている就学前学校です。今回はその3校の、主に環境構成に視点を当てて紹介します。良い環境があればよい教育ができるわけではありませんが、日本の園においてもヒントになるものがたくさんありました。
すべてに意味があり、意図がある
1.Förskolan Örnen (イーグル就学前学校)
2.Förskolan Aspen (アスペン就学前学校)
3.Snickerbarnens Förskolan (スニッケル就学前学校)
子どもが集めてきたどんぐり、まつぼっくりなどの自然物をみんなでみてみようという時。こんなふうに置けば美しく、系統的で、見ただけで子どもは自分なりに1つの概念の枠組みを持つことができるのです。
日本では大人が考えて“子どもにとって好ましいもの”を保育室に置いています。でも美しいもの、素敵なものは誰がみても素敵です。ネックレスやシルバーのチェーン、一緒に貝殻など・・・ここに光が当たると色が反射してとても美しい。それを感じるだけで充分なのです。
絵本をいつでも子どもが手に取れる場所に置くことはとても大事。日本でも最近はオープン式の本の表紙を前面にした本棚を置いている園も多くなりました。このように机の上に並べておく方法もありますね。日本の保育園でも見たことがあります。スペースがあればこんな置き方も子どもが手にとりやすいです。あるテーマを持って、その種の本だけ置くのもよいですね。
保育室に何をどのように置くか。そのものの存在が子どもの心にどう響くのでしょうか。それは分かりません。素敵!とか美しいとか、不思議、どうなっている?へんてこなの、触ってみたい、自分でも作ってみたい、試してみたい・・・
心がさまざまに揺れることこそが、子どもの感性に訴えるということなのだとこれらのものたちが訴えていました。ここにもこれは大人のものという発想の枠はありません。
<参考文献>
『スウェーデン保育の今 テーマ活動とドキュメンテーション』
白石淑江・水野恵子著
かもがわ出版 2013年
『スウェーデンに学ぶドキュメンテーションの活用』
白石淑江著
新評論 2018年